2016年10月23日日曜日

音色の記憶 1 / Memory of timbre 1




風が吹き、小々波に混じって
ピアノのような音色を聴いた記憶

少し怖くなり
急いで親を探しにいった小学生の頃

いまから思えば
いい音色だったな、なんて大人になった今は思う

朝TVから流れた映像を横目に
なぜか思い出した

こんなこと思い出すのも
たぶん

たいして好んでついた仕事でもないのに、
忙しさに追われ1日を終わり、目が覚めたら朝という毎日を
繰り返してるからだろうか

何がしたいのか
何を求めてるのか
何にすがっているのか…

お金がないと何も出来ないと自分に言い聞かせ
仕事をこなしてる
いつしか何がしたかったのか、自分の中から消えていた

考えることも止めてしまった今
何も欲求は起こらない

失った何かを取り戻したいとも思わない自分が
虚しく思える

吐き出す言葉はイツワリで
張り付いた笑顔は誰だろう
足取りは重く何かを引きずってる

帰りに寄った本屋で海へ行こうと呼びかけてる雑誌が
眩しく、すぐに店を出た

その近くの歩道橋下では
ストリートライブをやっているようで
数人が佇んで聴いている

あ、
なんだったけなと奏で出た音が
耳に残った
電車に揺られながら
朝思い出したピアノの音色に似ていることに気がついた

家に着き
ドロドロに疲れきった身体をソファーに横たえ
シャワー浴びなきゃなぁ…なんて
思いながら…

目が醒めると眩しくて
なんだか身体が動かない

時計を見ると
今すぐ頑張れば遅刻は免れそうだ…
とわかっていても
身体が動かない
焦る気持ちともうイイヤなんていう感情が入り混じる

昨日見た雑誌が眩しかったな
なんてのんきに思いだしている場合じゃないかと起き上がり
オトナなふりして今日も慌てて
駅のホームに並んでる

いつもなら座れない犇めく車両
何かアナウンスで車両故障により電車が変わったとかなんとかで
ベンチシートでなく2人掛けの座席の車両だった
運良くなのか奥に押しやられたせいで
席に座ることができた

座席を見上げると
押し潰されそうな人達の目が怖く殺伐としている

睨まれている錯覚をおこすので
自分の足元に目をやりボーッとしている内に

眠ってしまったようだ

ああ、
ヤバいな、完全に遅刻だ…
知らない駅に着いたので
戻るにはどのくらい待たないと行けないのか駅員さんに尋ねようとも
人の気配がない

会社にボクは行きます!遅れても行きます!

なんて連絡せねばと
使命感がさっきまであったのに
誰もいない駅のホームの解放感につられ

しぶしぶ会社に
休みの連絡だけでもせめて入れなきゃと思い
携帯から会社に連絡したが、何故か繋がらず
上司のどうせ出ない携帯に留守電を残した

1時間以上も寝てしまっていて、ローカル線の果てまで来たようだ
そのままホームにいるのも勿体無い気がして
無人の改札を後にした

やけに緑が多く生い茂って、暑く虫の声も元気に聞こえる
何処か涼しげな場所が無いかと
自然に探し始めた

こんなスーツ姿で
こんなとこを革靴で
こんなにも汗だくで

何してるんだろうかと思いながらも
進んで行った

急に開けた場所が出てきて
その奥には湖畔がキラキラとしていた
涼しいけれど、太陽の照り返しがキツく眩しくて水面を直視できない

ちょっと木陰に座ろうかと辺りを見回し、少し大きな石の上に
腰を下ろした

なんだかこんなにも
ゆっくりとした記憶が最近なく
自分自身コレは何をする時間なんだろうと混乱していた

少しずつ自問自答し始め
なんで働いてんだろうか?とか
そもそも何をしたかったんだっけ?とか
このままが良いのか悪いのか判断ついていない自分が
情けないな…とか

全然関係のない
小学生の頃の習い事なんか思い出し、
なんでそろばん塾行ってたんだ?とか

運動嫌いなのに、スイミングスクールには通ってたのは
使命感みたいなもの感じてたのは何でだったかな?とか

音楽が楽しいなと、思い始めたのは楽器を弾ける同級生楽器を
羨ましくカッコ良さを感じたからかな?とか

くだらないことが頭をめぐるうちに
ウトウト寝てしまっていた


                              次週へつづく
      
音色の記憶   1    /  Memory of timbre 1





絵画素材 墨汁・画用紙 380×540 
Painting material India ink, drawing paper 380 × 540